月別アーカイブ: 2015年6月

旅の反省文(その9)

旅人の資格9.自由

自由ってなんだろう?
誰にも縛られず、どこにでも行けて、何にでもなれること?

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中米を南下していた。

チキンバスというおんぼろのデコバスを乗り継いで、ニカラグアからコスタリカへ国境を越える。クラウド・フォレスト(雲の森)というすてきな名前の森に行きたい。
雲の森にたどり着くためには、さらにバスを2本乗り継がないといけないというとで、
国境から出るバスに乗って、途中下車するのは2本の国道が交わる交差点。
交差点からはさらにもう1本、ローカルバスを拾って、森まで上る。
バスは1日に1本だか2本だか、よくわからないらしいけど、たぶん来るでしょう。大丈夫でしょう。

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旅の反省文(その8)

旅人の資格.楽しむこと

好きになるのに、理由なんかない。

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夜。

ライブハウスの、壁の木目に煙が滲みて、時間のにおいがする。
静寂を切り裂くラッパは、それは暗闇に差し込む白いひかり。
天井を抜けて、夜空から星が、雨のように降る。ぽろぽろ。さらさら。それはピアノの鍵盤におさまる。
サルサを踊るキューバ人の、胸元のにおい。「サルサを踊るときだけは、男にリードを許すものなのだよ」
ステップを踏む足元に、ドラムのリズムがワンツースリー。チクチク。パパパパ。ぺっぺ、っぺっぺ。
汗をかいたモヒートの、ミントがつん、つんと清い。

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旅の反省文(その7)

旅人の資格7.正直になること

「生活と暇を与えても人は考えない。彼らのやることはレジャーかセックスです」と池田晶子が言ってます。
考える人は金と暇がなくても考えるし、考えない人は金と暇を与えても考えない。

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アフリカの旅11ヶ月は、言っちゃあ武器を増やす旅だった。

泥だらけのバックパック。テント、寝袋、マット。を、担げる肩
埃まみれTシャツ(甲冑)に両替商と喧嘩する権幕()に、マラリア薬に。
周囲には、私を守ってくれる現地のおばちゃんたち。
アフリカ全土にわたる中途半端な知識、表層を泳ぐ思考。うそかまことか、共感と理解。
荷物そのものは15㎏でも、なんかもっと重いものを背負って旅をしていた気がする。

アフリカを終えてヨーロッパに入っても、しばらくは何か戦いの後の後遺症のようなもので、ぼんやりとしていた。

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アフリカこぼれ話(酒)

旅人(社会人)の資格?お酒を飲みすぎて困ったことにならないこと

飲みすぎは、よくない。日本でもよくないし、海外で前後不覚になるのはもっとよくない。やんちゃはダメ。常識です。そこそこ守りましたよー。

ケニアのカジノで小金を稼ぎ、

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ジブチでマッチョな軍人を肴にし、

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ウガンダでピグミーの村に飲みに行き、

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ブルンジでバナナワインに挑み、

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旅の反省文(その6)

旅人の資格6.タフであること

タフな旅人になりたいと思っていた。 どんなに汚い場所でも気にせず入っていき、50時間移動などものともせず、雨にも負けず、風にも負けず。

求道的な、修行のようなハードな、かっこいいと思っていた。 30前後に享楽的な遊びを長いこと続けているという後ろめたさも手伝って、自分は結局世間知らずなのであるというコンプレックスも手伝って。

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というだけじゃないけれど、西アフリカへやってきた。見どころなし、移動過酷、気候過酷、マラリア猛威、情勢悪い、フランス語、と6拍子そろった旅人泣かせの土地である。もうアフリカをこじらせていたとしか言いようがない。最初は軽い気持ちでした、と証言させてほしい。

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旅の反省文(その5)

旅人の資格5.反省すること

旅人はどこまで行けるのか。答えづらい問いである。

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西アフリカを旅しているときに、マリに行った。
マリといえば、どこそれ、が一般的な反応で、泥のモスクを連想するのがマニアックな反応。そんなとこ行って大丈夫なのと、心配するのも正しい反応。
北部でフランス人が誘拐されて殺されたのが2011年末だった。2012年にクーデター。2013年、北部にフランス軍事介入。
でもマリは大きい国だから、国の中でも危険度はかなり違う。 国の北半分は赤(退避勧告)、その他は濃い橙(渡航の延期をお勧め)、首都周辺のみ橙(渡航の是非を検討)、というのが、外務省危険情報の色分けである。

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旅の反省文(その4)

旅人の資格4.無計画であること

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無計画な旅は、旅らしい。と思っていた。し、今でも思っている。
朝起きて、さあ、今日どこに行こうかな。けっこうここも気に入ったんだけど、そろそろ新しい場所にも行きたいしな、なんて考えて、地図を広げて(地図なんてないけど)目をつぶってピンを投げる。明日の計画なんて、要らない。みたいなやつ。
もちろんその無計画さゆえに多少の損をすることにはなるかもしれないけど、その損も織り込み済みで、
旅はたくさんの、色鮮やかな無駄。であっていいと思っているし、そうあるべきだとすら思う。
だって、お得な旅をしたいなら、パック旅行でいいじゃんね。半年前に早割チケット取ってバリに行くのでいいじゃんね。せっかく無職にまでなって放浪している意味、ないじゃんね。

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アフリカこぼれ話(バンジー)

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バンジージャンプの飛び込み台に立って、下を覗いたら奈落の谷底が広がっていた。ビクトリアの滝の轟音が頭を這い、目がくらんで、死ぬ、と思った。世の中にはできることとできないことがあり、これは、できないことでしょうよ、と。
下を見るたびに、頭がくらっとして失神しそうになった。

でもねえ、せっかくここまで来たわけだから。
でもねえ。これは本気でパニックになる高さやで。なんてったって、110mやで。
でもねえ、せっかく1.5万も払ったわけだから。
でもねえ。ここで昔、綱が切れたという怖い怖い話があってだな。
ガタイのいいおじさんが後ろから勇気づけてくる。「大丈夫、ほら、何百人の人が飛んだわけだから」

そこから5分、逡巡した。5分。そしてやめようと思った。

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旅の反省文(その3)

旅人の資格3.決して急がず、決して焦らず

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結核菌を獲得した私は、風のよく通る南の島で、サモア人の書いた本を読んでいた。いわく、「ヨーロッパ人は病気だ。彼らは一日を切り刻む」「切り刻まれた部分に、名前を付ける。秒、分、時という名を」

旅にはほんとうは、期限なんてない。
1週間後にあの町に行こうとか、5分後にこのバスに乗ろうとか、会社に申請した8/15までだとか、就職までに帰ろうとか、そういうのは社会が定めているようにみえて自分が定めた、ランダムな期限。だから本当は私たちも、急ぐことはない。アフリカ各地で言われつづけたのは、

「急いでもろくなことないぜよ」
うん、そうだね。

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旅の反省文(その2)

旅人の資格2.勇気を持つこと

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それから2年と少しが経ち、私はインドネシアの小さな島で暇を持て余していた。
島を抜ける風は潮の中に緑のにおいを含んで、その日のお昼は宿の女主人と私のふたりだった。
「日本は、民主主義なの?」「子供たちは、働かないで学校に通えるの?」「それほど、ゆたかなの?」「日本軍は、インドネシアに来てひどいことをしたんでしょう?」
もう60を過ぎたオランダ人の彼女の言葉には、無邪気な差別表現が含まれていて、私はげんなりしたけど、バンガローに戻る道をぺたぺたと歩きながらふと思った。それは差別主義というより、無知なのである。だって同じように、私もまた「アフリカ」という大陸に対して無知な先入観を抱いていたから。

裸足の足の裏がちくちくと熱かった。

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アフリカといえば、思い浮かべるもの。貧困。エイズ。紛争。虐殺。

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