Ferry back home / 帰る
帰省の船は、体育倉庫のにおいがして床がびっしりとバングラ人で埋められていて天井が低くて息が詰まるけど、それでも、気怠い安心感に満ちている。だってあとは、帰るだけなんだ。
Seasons go by / 乾季の朝に
ダッカの空気は分厚い砂塵でびっしりと覆われていて、気まぐれの雨でもなかなか流せない。乾季の終わりの3月にはそこらじゅうで工事がされて、道の舗装がそのまま空気に舞っているくらいの密度で、顔に痛い。目に痛い。肺にも痛い。
雨季になるとざばざばと降る雨で砂塵は洗われ、クリアになった空気は逆にかび臭い水を含んでむしむしと暑い。側溝の下水があふれて川ができて、帰宅後の足はいつもどぶのにおい。しかも蒸し暑さから電力消費量が増えて、毎日停電だ。
どっちもどっちなんだけど、ひどい気管支炎を患って私は雨季を待ち焦がれるようになった。
胸じゅうにねっとりとした痰のへばりついて、息もろくにできず、苦しくて不安で仕方ない長い夜を過ごして、私は朝がやってくるのをなにか神々しい気持ちでとらえるようになった。ぜんそくの人はこの痛みに耐えて大きくなったのかと思うと、ぜんそくの人に心やさしい人が多いのもうなずける。
蒸し暑くてもどぶくさくても、雨でぬれても空気がきれいな方がいい。雨季よ。はやくやって来い。
2015.3.13