見知った夜 (南の島) (の夜) 朝になると澄んだ青い水面の揺れる海は、夜はただのっぺりと黒い。 夜中の12時にはボーと船の汽笛の音がする。冗長に響くその低い音を聞くと、この世界に私ひとりじゃないんだという気がして安心する。私は高台のテラスから、黒く塗りつぶされた暗闇の向こうを眺めている。オレンジの灯りだけがぽつぽつと、港のかたちを縁どっていて、こういうの、知ってるなあ、と思う。 続きを読む →