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旅の反省文(その6)

旅人の資格6.タフであること

タフな旅人になりたいと思っていた。 どんなに汚い場所でも気にせず入っていき、50時間移動などものともせず、雨にも負けず、風にも負けず。

求道的な、修行のようなハードな、かっこいいと思っていた。 30前後に享楽的な遊びを長いこと続けているという後ろめたさも手伝って、自分は結局世間知らずなのであるというコンプレックスも手伝って。

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というだけじゃないけれど、西アフリカへやってきた。見どころなし、移動過酷、気候過酷、マラリア猛威、情勢悪い、フランス語、と6拍子そろった旅人泣かせの土地である。もうアフリカをこじらせていたとしか言いようがない。最初は軽い気持ちでした、と証言させてほしい。

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旅の反省文(その5)

旅人の資格5.反省すること

旅人はどこまで行けるのか。答えづらい問いである。

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西アフリカを旅しているときに、マリに行った。
マリといえば、どこそれ、が一般的な反応で、泥のモスクを連想するのがマニアックな反応。そんなとこ行って大丈夫なのと、心配するのも正しい反応。
北部でフランス人が誘拐されて殺されたのが2011年末だった。2012年にクーデター。2013年、北部にフランス軍事介入。
でもマリは大きい国だから、国の中でも危険度はかなり違う。 国の北半分は赤(退避勧告)、その他は濃い橙(渡航の延期をお勧め)、首都周辺のみ橙(渡航の是非を検討)、というのが、外務省危険情報の色分けである。

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旅の反省文(その4)

旅人の資格4.無計画であること

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無計画な旅は、旅らしい。と思っていた。し、今でも思っている。
朝起きて、さあ、今日どこに行こうかな。けっこうここも気に入ったんだけど、そろそろ新しい場所にも行きたいしな、なんて考えて、地図を広げて(地図なんてないけど)目をつぶってピンを投げる。明日の計画なんて、要らない。みたいなやつ。
もちろんその無計画さゆえに多少の損をすることにはなるかもしれないけど、その損も織り込み済みで、
旅はたくさんの、色鮮やかな無駄。であっていいと思っているし、そうあるべきだとすら思う。
だって、お得な旅をしたいなら、パック旅行でいいじゃんね。半年前に早割チケット取ってバリに行くのでいいじゃんね。せっかく無職にまでなって放浪している意味、ないじゃんね。

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アフリカこぼれ話(バンジー)

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バンジージャンプの飛び込み台に立って、下を覗いたら奈落の谷底が広がっていた。ビクトリアの滝の轟音が頭を這い、目がくらんで、死ぬ、と思った。世の中にはできることとできないことがあり、これは、できないことでしょうよ、と。
下を見るたびに、頭がくらっとして失神しそうになった。

でもねえ、せっかくここまで来たわけだから。
でもねえ。これは本気でパニックになる高さやで。なんてったって、110mやで。
でもねえ、せっかく1.5万も払ったわけだから。
でもねえ。ここで昔、綱が切れたという怖い怖い話があってだな。
ガタイのいいおじさんが後ろから勇気づけてくる。「大丈夫、ほら、何百人の人が飛んだわけだから」

そこから5分、逡巡した。5分。そしてやめようと思った。

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旅の反省文(その3)

旅人の資格3.決して急がず、決して焦らず

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結核菌を獲得した私は、風のよく通る南の島で、サモア人の書いた本を読んでいた。いわく、「ヨーロッパ人は病気だ。彼らは一日を切り刻む」「切り刻まれた部分に、名前を付ける。秒、分、時という名を」

旅にはほんとうは、期限なんてない。
1週間後にあの町に行こうとか、5分後にこのバスに乗ろうとか、会社に申請した8/15までだとか、就職までに帰ろうとか、そういうのは社会が定めているようにみえて自分が定めた、ランダムな期限。だから本当は私たちも、急ぐことはない。アフリカ各地で言われつづけたのは、

「急いでもろくなことないぜよ」
うん、そうだね。

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旅の反省文(その2)

旅人の資格2.勇気を持つこと

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それから2年と少しが経ち、私はインドネシアの小さな島で暇を持て余していた。
島を抜ける風は潮の中に緑のにおいを含んで、その日のお昼は宿の女主人と私のふたりだった。
「日本は、民主主義なの?」「子供たちは、働かないで学校に通えるの?」「それほど、ゆたかなの?」「日本軍は、インドネシアに来てひどいことをしたんでしょう?」
もう60を過ぎたオランダ人の彼女の言葉には、無邪気な差別表現が含まれていて、私はげんなりしたけど、バンガローに戻る道をぺたぺたと歩きながらふと思った。それは差別主義というより、無知なのである。だって同じように、私もまた「アフリカ」という大陸に対して無知な先入観を抱いていたから。

裸足の足の裏がちくちくと熱かった。

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アフリカといえば、思い浮かべるもの。貧困。エイズ。紛争。虐殺。

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旅の反省文(その1)

旅人の資格1.おなじものを食いおなじものを飲むこと

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郷に入っては郷に従え。旅人というものは、そりゃあ、土地のものを食い、土地の酒を飲まなければいけない。そうやって行く先々のもので身体と心を作っていくというのは、旅人の変身願望を満たしてくれる、とてもわくわくすることである。

だから私はインジェラだって平気だ。そう、ぼろ雑巾の上にゲロと形容される、悪名高いエチオピアの主食だって。

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旅の反省文(その0)

旅にはたくさんの興奮や感動やトキメキが宿っている。それはそのとおり。

そのとおりなんだけど、そうはいっても実際の日常はいいことばかりじゃなくって、泣きたくなったり(泣いたり)、キレたくなったり(キレまくったり)、自己嫌悪に陥ったり不安になったり生きててすみませんの連続である。でもまあ人生だっておんなじで、反省だらけ懺悔だらけの恥の多いやつをそれでも32年も生き延びてきちゃったわけだから、しょうがないよね。と思って心をしずめる。

旅も終えて1年が経つと、記憶が平らになって、「楽しかったなあ」も「大変だったなあ」も「もう死ぬ、今日死ぬ」も、「うん、生きたなあ」のひとフレーズに収斂してくる。
旅が順調に行っていた場所も、超大変だった場所も、ひとしく、旅らしく、いい思い出。
そう、虫にやられて苦しかった東アフリカの旅も、吐きまくって死ぬかと思った西アフリカの旅も、早すぎて見えなかった中米の旅も、孤独で不安だったギアナ3国の旅も、今やいい思い出です。やっといい思い出になりました。やっと。

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旅をした2年間のことを、あれは一体なんだったのだろうとずっと考えていて、あれはやっぱり憧れだったんだろうなと、そう思うに至ったのが、やっと最近。

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Ferry back home / 帰る

帰省の船は、体育倉庫のにおいがして床がびっしりとバングラ人で埋められていて天井が低くて息が詰まるけど、それでも、気怠い安心感に満ちている。だってあとは、帰るだけなんだ。

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Neighborhood inhabitant vol.2 / 線路沿いのスラム

「ここが、一番強烈だわ」
日本から遊びに来た友人が言った。
「オールドダッカよりも?」
「うん」
「川で小舟に乗るよりも?」
「うん」
「どうして?」
「だって、ここには生活があるじゃない」
彼女はつづけた。
「なんか、映画の中にいるみたい」

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