Bangladesh001-Dhaka

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Winter stall / 冬ピタパン

バングラにだって冬が来る。
夜になると気温は10度まで下がるし、布団も一枚じゃ寒いし、そこらじゅうにたき火の赤あかと燃えるいろが見える。道ゆくおやじはマフラーで顔をぐるぐる巻きにして、しばれるーと肩をすぼめる。

冬の風物詩のひとつにピタパンというのがある。(たぶん)米の粉でできたふかふかの蒸しパンのようなもので、道端で焼かれてはココナツや砂糖やはちみつをかけて一枚10タカ(15円)で売られている。

はじめてバングラに来たときも冬だったので、ピタパンからはバングラがまだ生のまま鮮度をもって横たわっていたときのにおいがする。空気がかさかさに乾いてつんと寒い冬の朝の、日が落ちてアザーンを乗せる風のひんやりと心地よい冬の夕方の、かすかに甘さを残したやさしいにおいがする。

今日のピタパンはココナツが多くてちょっと喉に甘かったけれども、湯気がのぼるほどにアツアツで、指でちぎるとほろりとくずれた。売り子のおやじが「わし、ナマズ(お祈り)行くで」と言って屋台をそのままにモスクに入っていくのを見送りながら、私はふかふかのパン生地をかき集めつ、ココナツの粉を舐めとりつ、モスクの向こうに暮れる夕日を見ていた。

2015.1.12