Japan011-Tokyo

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Yesterday’s World / バックパッカー

成田からの帰り道に近所の焼き鳥屋に寄って、家までワンメーターをタクシーに乗った。赤いスーツケースはトランクに積み込んだ。
玄関からは実家のにおいがする。私は家族にただいまと告げて風呂に入る。ただいま。ただいま。ただいま?うん、なんかこうじわっと来る安堵の感覚がうすい。とつぜん身体がずんと重くなる実家の重力が弱い。ただいま感が、すくない。うーん。
きっと今回はたった3週間の旅行だったからだ。ヨーロッパだったからだ。焼き鳥屋でけっこう飲んで来たせいだ。ラーメンで和食恋しさが一気にほぐれたせいだ。うーん。
いや、ちがう。ちがうちがう。肩の荷物を下ろしていないからだ。
肩に背負った生活を、自由を、手放したという感覚がないからだ。首筋まで食い込む孤独を、骨盤で支える旅の時間を、その時間の中にあった私自身を、帰宅とともに下ろすことができないからだ。
だから、旅っていうのはバックパックのことなのだ。少なくとも私にとっては。

2015.1.7