Bangladesh020-Dhaka

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Sadar Ghat / 渡し舟

友人が来バすると私はいつも、ダッカの南端を画するこの川で渡し舟に乗せる。オールドダッカはブリゴンガ川で行き止まりになっていて、渡ったところからダッカの隣町になるのだ。
連れてこられた友人はみな口をそろえて「やばいね」「やっばいね」と言う。私も最初に来たときはやばいな、やっばいな、と心中唱えていたはずだけど、もうそのやっばさを忘れてしまったので、一緒に追体験する。たぶんそのやっばさは、渡し舟という彼らの生活の一部にフィクション性があるということなんだと思う。たぶん。いや、ほんとかな。
だってある人は「昭和の日本を見ているようだ」と言うし、ある人は「将来ここはどうなっているのだろう」と言うし、「舟が虫のようにみえる」と言うし、「まるでアトラクションのようだ」と言う。「これで毎日通勤してるんだね」とか「5分や10分で渡れるんだね」とか「あ、あのおじさんは買い出しの帰りかな」とか言う。それからみないつも口をそろえて「どぶのにおいがきつい」と言う。

私はよく桜島のフェリーを思い出す。錦江湾を桜島に渡るフェリーはきっかり15分で、船はもっとたくさんの人が乗れて中に立ち食いうどん屋さんもあった。だから船自体は全然違うんだけど、なんだかその生活感の中にある非現実性を、対岸にたどり着いた接岸時の、カチッと違う場面に切り替わる平成の日本での不思議な感覚を、思い出しながら一緒に「どぶのにおいがきつい」と言う。