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Cheers to Gaudi, New Year’s Eve / アパート、安寧欲、そこで5本の柱(カヴァ、白、赤、青、緑)

ポルトガルの宮殿ホテルは清すぎた。清すぎる場所も窮屈である。と、いいながら、バルセロナで泊まったアパートホテルの居心地の良さといったらなかった。

リビングはサグラダファミリアに面していて、やわらかなソファがふたつあってよく光が入った。隣には4人掛けのダイニングテーブルがあって、私たちは日がな一日、ソファかテーブルに座って雑談をして、サグラダファミリアを肴に酒を飲んだ。
そこから朝もやのなかにファサードの凹凸がまるでひだのようにみえるサグラダファミリアをみるのが楽しかった。強い午後の日差しに逆光になって、後光をさしながら青空にシルエットを浮かびあがらせるサグラダファミリアをみるのが好きだった。夜の6時を過ぎてライトアップされたサグラダファミリアの土銀いろにかがやく姿はワインボトルにとげをはやしたような美しさで、ライトアップが消えるころには私たちはいつも酔っぱらっていた。

心がしずかになる空間というのは何にも代えがたい、と私は思った。煙くて汚い場末のバーで鬱屈したおやじたちと酒をあおる興奮が動的欲望なのならば、すずしい風の入る窓の広いリビングとふかふかのソファを置いたアパートに数日住んで本を読んだりワインの栓を開けたりするという愉悦は静的欲望なのかもしれない。そう思った。
ちなみに同じアパートの4階に半年前、ミスターイノウエこと井上雄彦が泊まっていたらしい。

2014.12.31