カテゴリー別アーカイブ: Europe

Spain002-San Sebstian

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It’s this time of the year again / お祭り日和

サンセバスチャンでお祭りがやっていた。なんだか朝からうるさいなと思って外に出たら、バスクの民族衣装を着た老若男女が腕に腕を重ねて踊りながら路地を闊歩している。彼らは広場まで行くと腕をほどき、チョリソーやらお菓子やらアップルサイダーみたいなワインやふつうのワインを買い求める。ワイワイ、ワイワイ。

ぎっしりと人で埋め尽くされた広場に入った瞬間に友人とはぐれた。そっこーで探すのを諦め、人の波に流されながらチョリソーを買い、ビールを買い、パンを買い、ワインを買い、二杯めのワインを買い、もう一度次はちがう種類のソーセージ、と思っている間に広場から押し出された。人々はみな陽気で足取りも軽く、空は高く青く明るく、日向も日陰も一様にぽかぽかしていて、海には祭りの音楽が反射して町じゅうがきらきらしていた。

海を歩いて路地に戻るとトランペットの音が聞こえた。つづいて太鼓のリズム。アコーディオン。うた。人並み。一緒に歌う人たち。のめのめ、おどれおどれ。ゆけゆけ。人だかりが左右に揺れているのをみて私は全身が明るい恍惚の中にゆらゆらと沈んでいくのを感じた。きれいだ。きれいだ。

2014.12.21

France003-Hendaye

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Zizzing / ピレネーを越える夢

朝のTGVはしんと静まり返っている。
無理もない。パリの朝は遅い。7時28分パリ発エンダイエ行きの汽車は、窓枠の内側をまだ暗く明けの闇に染めたまま、スペイン国境に向かって延々と南下する5時間の旅を始めたばかりだ。
むっとする暖房のにおいに混ざって、線路の上をひそひそと滑る汽車の音。窓の外の寒さと引き換えに、2等列車16号車の中に流れているのは寝息の連なりだ。
みんなねむっている。あるものは窓枠に、あるものは彼氏の肩に、あるものは友人の鞄に、あるものは椅子の背にもたれ、思い思いの夢を、思い思いの寝息の中に信じている。寝息は意識を煙にまく。時間が、止まってしまったのではないかと私もまた身体の半分を夢の中にもたせ掛けながら思う。

目を覚ますと窓枠に雨粒が流れ、その向こうに白く泡立つ海がみえた。眠っているうちにピレネー山脈を越えていたようだ。
無理もない。ゆうべは明け方まで飲んでほとんど寝ていない。5時間分重たくなったまぶたをもったりと開いて終点のエンダイエで降りて、スペイン側の電車に乗り換える。切符を買うとすでに電車が待っていた。
じゃあ、と友人が言う。Vamos?

2014.12.20